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[3] 荷造り

その頃、電通のYさんという人と知り合う機会があり、

自分の作品(スケッチ・モデル)を見せて思いを語ったことがあった。

すると彼は、私の車のデザインに命までかけんばかりの意気込みと熱意に感動して、

トリノツアーへ行くちょうど同時期に、

偶然彼もまたイタリアのデザイン会社とCMのタイアップの仕事で出張に行くので、

現地で合流してデザイン関係の取引先や、

交流のある人を紹介してまわろう、ということになった。

私の方が少し早く現地入りしていたので、ツアー終了後一人でしばらくホテルに滞在し、

彼を待つことになるのだが、ツアーで見学ということではなく、きちんと紹介という形で、

ピニンファリーナや、私の一番好きな憧れのベルトーネ、

かの有名なジウジアーロやガンディーニを輩出したカロッツェリアだ、

そこへ連れて行ってもらえるというのだ。

私は、一度行くからには、現地でコンタクトのとれたデザイン会社に自分の作品を見てもらい、

あわよくばそのまま採用してもらおうという、手ぶらでは帰るつもりのない、不退転の覚悟をしていた。

ということで、スケッチやレンダリングした資料など、自分をPRするものを荷造りし始めた。

そこで悩んだのがFRP製のデザインモデルである。

1/5とはいえ約50cmはある大きなものである。

当時、色も形も違う2つのモデルを製作していたのだが、

そのことをYさんに相談することにした。

『持っていく資料は、デザインスケッチなどのスケッチブックだけでいいかな?

モデルは大きいのでどうしようか?』

と恐る恐る聞いてみると、一言、

『持って来い。』

とのこと、

彼いわく、

『デザイン画だけより、実際に形になったモデルもあったほうがインパクトが違う。』

『1つよりも2つあったほうがいい。』

なるほど確かにそうだ、その彼の言葉に励まされ、大きなモデルを持って行くことにしたのである。

持っていくとは言ったもののかなり大きなものだ。

しかもデザインモデルなのでしっかりと梱包しなければならない。

私はその2人の娘達を1人ずつ、釘で打ちつけて蓋をする頑丈な、りんごを入れるような木箱に入れ、

厳重に発泡材などで中身を保護した。

元のサイズでさえ50cmはあるものが、梱包すると縦横ともに大きくなり、

1m20cmぐらいの大きさになった箱入り娘が2つも私の前に出現することとなる。

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