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[6] トリノの夜

ようやくホテルへ到着し、

明日からのトリノモーターショーや各社への見学など、楽しみにしていたその日の夜、

ある人物が私の部屋へとやってきた。

ツアー参加者で、ある会社の重役をしていてバイクや車のデザインをしてきた、業界では結構有名な人だ。

今回同行している時に見た私の熱心さに好意を持っていただいたのか、

私より年配のその彼が、部屋へ訪ねて来てくれたのだ。

『山﨑さん、一生懸命だね。がんばっているみたいだね。』

私の一途な姿勢を見て親しみを持ってくれたのか、半分は同情かもしれないが、その人が言うには、

『ランボルギーニだ、フェラーリだ、エンジン、シャーシが欲しいだとか、

このデザインにそれを乗せたいと。その気持ちはわからないでもない。

しかし、スーパーカーを作るということは、ものすごく困難なことなんだぞ。』

『フェラーリやランボルギーニと簡単に言うが、エンジンを手に入れることだけでも大変なことだ。』

『そんなばかでかい、空想みたいな夢を持つことも大事だが、転ばぬ先の杖として、私が国産のあるメーカーに言えば、ホワイトボディー(エンジン・シャーシ・サスペンションなどがついている、外装のない素体)を提供させることが出来る。』

『これからはライトウェイトスポーツの時代が必ず来る。』

と私に言った。

だからその分野でデザインして、ボディーを作り、それからデビューすれば、

リスクも少ないのではないかということなのだ。

『お金もかからないし、私がメーカーに言ってあげるから。』

一生懸命、夜中に私の部屋にまで来てそういうことを延々とその人は語ってくれた。

そんないい人に見てもらえて、気持ちは大変ありがたい。

私の持ってきた1/5モデルも見て感動してくれた。才能も少しは買ってくれたかもしれない。

夜遅くまで一生懸命、「転ばぬ先の杖」論を私に話してくれた。

『むちゃなことを考えて、無謀なことはするな。』

とも、アドバイスしてくれた。

だが私はどうもありがとうと言いながらも、その話をお断りした。

というのは、心の中で国産のライトウェイトスポーツなんて作る気持ちはさらさらなかったからである。

なぜなら、売れるとか、売る為にとか、デザイナーとして商売する為、という気持ちはなかったからだ。

子供の頃から、ベルトーネの芸術的なフォルムに憧れていた。

あのような芸術的で美しいフォルムを持った、世界で最高のデザインをした車を作りたいと。

その思いだけで一心に、両手両脇に大きな荷物を抱えてまで、はるばるここイタリアまでやって来たのだ。

そういうわけで、申し訳ないが、

ライトウェイトスポーツがこれからの時代の流行りだから、先手を打ってやろうという発想もまったくなかった。

商売をするつもりでもなく、またデザイナーとして食っていきたいわけでもない、

夢と理想を追求して実現する為にやっているのだから。

その人との話はひとまず丁重に終わらせていただいた。

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2 comments

    • Grizzly on 2016年05月14日 at 18:41

    Reply

    That’s a slick answer to a chenlalging question

    • Seston on 2016年05月14日 at 20:14

    Reply

    Oh my goodness! an incredible article dude. Thank you Nonetheless I am exnpcienrieg difficulty with ur rss . Don’t know why Unable to subscribe to it. Is there anybody getting identical rss problem? Anybody who knows kindly respond. Thnkx

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