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[7] 運命の選択

翌日から有名な各社、イデア、ベルトーネ、ピニンファリーナなどを一通り見てまわり説明を受けた。

私以外の彼らはトリノモーターショーを見て1週間足らずの日程を無事終了し、日本への帰途につくのだが、

私は主催者に事情を説明して残ることにした。

もちろんYさんと落ち含う為であるが、

自分ひとりでホテルをとって、滞在を延長するなんてことは生まれて初めての経験である。

若い時、美術の研修でイタリアに来たことはあったが、海外に一人きりで残るという経験は初めてだ。

トリノのジョリーホテルに滞在し、Yさんのイタリア入りを待つのである。

何日かした後、Yさんがイタリア入りして彼に会うことが出来た。

そこで次々に紹介してもらうことになるのだが、

イタリア、特にトリノという街は自動車の街として一見大きいようで、

人脈が水面下では繋がっているのだ。意外と狭い世界である。

だから、Yさんが言うには、

『どんな会社でもコネがあるから、どこでも紹介しますよ。

ただし、ピニンファリーナかベルトーネのどちらか一方を選んでください。』

というのは、例えばベルトーネにYさんから紹介してもらって行くとする。

すると次はピニンファリーナへ、というわけにはいかない。

この山﨑は貴社に憧れて来た、ということで紹介しなければいけないからだ。

なぜなら、そのほうがインパクトがあるとのこと。

『ピニンファリーナへ行くなら、そこだけと決めてください。』

もし両方へ行った場合、ピニンファリーナとベルトーネといえどもお互いに話ぐらいはする仲だ、

前述したように、トリノは意外と狭い世界である、ましてや東洋人が出歩けば目立ちもする。

『そういえばこの前、変な日本人が来ていたな。』

『えっ!?俺のところにも来ていたぞ!』

となれば、

『なんだあいつは!イエローモンキーは嘘つきだ!俺のところだけと言って来たから、時間を割いて会ってやったのに。』

と、騙そうとしてどちらにも行って、両天秤にかけているかのようなイメージは一番嫌われ、

信用を失くすもとである。

だから、初めにどちらへ行くか決めなければならなかった。

Yさんいわく、ピニンファリーナのほうは兄弟が二人いるが、片方の人物なら飯を一緒に食うほどの仲で、

よく知っているそうだ。

他にも、当時電通が手掛けた仕事でピニンファリーナをCMで起用しているということもあり、

人脈などパイプは太いし、喜んで紹介出来るということらしい。

Yさんからすると、どちらかといえばピニンファリーナへ行って欲しいのだろう。

あのフェラーリのデザインを今日においても伝統的にやっているすごい会社なのだから。

『山﨑さんのデザインなら十分通用するし、きっと採用して受け入れてくれるよ。』

確かに、デザイナーとして就職する気があり、

彼に紹介してもらえれば問題なく採用してもらえるかもしれない。

だが本当のところを言うと、ピニンファリーナのデザインより、

ジウジアーロ、ガンディーニのベルトーネデザインが好きだった。

それに憧れてカーデザイナーを目指した部分が大きいからだ。

あの芸術的なフォルムに。

ピニンファリーナはどちらかといえば工業的なデザインで‘自動車’のデザインである。

私が感銘を受けたベルトーネのデザインは、純粋に造形美、アートの世界だ。

そのほうが私は好きだった。

そんなタイプは2つあるわけだ。メカ好きとアート好き、機能美と造形美、工業製品か芸術作品か、である。

それで私は悩むことになる。

はっきり言うとピニンファリーナのほうが大手である。

Yさんが言うにも、ピニンファリーナのほうが、紹介しやすい、ということだ。

『どちらかにしてくださいね。』

ピニンファリーナかベルトーネ。

一晩、私は考えたのである。

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1 comment

  1. Reply

    That’s a smart way of loniokg at the world.

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