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[8] 憧れの会社へ

悩みに悩みぬいて、確かに就職活動をするならば、ピニンファリーナのほうがいいのだが、

私は、原点に還るとベルトーネに憧れている。

やっぱり利益を考えず、純粋な気持ちでベルトーネに決めたのである。

そこでYさんに頼んでベルトーネにアポを取り、確か休日だったと思うが、

その日しか会えないということだった。

Yさんと通訳をしてくれる日本人の女の子の3人で、

例の大きな荷物、1/5モデルとスケッチ・レンダリング資料など一式を抱えて、

トリノのかなり郊外、アルプスのふもとにあるそれは綺麗なデザインスタジオへと向かった。

自然に囲まれた環境で、その一角にモダンな建物がありその中へと案内された。

休みなのでスタッフなど他の人は誰もいなかったが、入り口から大きいホールがあり、

部屋の大きい机の向こう側、その真ん中に2人の人物がじっとこちらを見据えて待っていた。

ベルトーネのマネージャーとチーフデザイナーの2人である。

そこへ私たちがどうもといった感じで、忙しい中すみませんと言いながら近づいていった。

ちなみに私は日本語オンリーだが。

モデルの木箱のひとつは机の側に置き、

もうひとつのモデルの木箱とスケッチなどはテーブルの上へと置いた。

だが向こうは無愛想で、こちらがお辞儀をしても、椅子を立ちもしないで座ったままだ。

向こうが言うには、

『こっちはいろいろと忙しいんだ。君のような人は世界中から、それこそ東洋人から西洋人までいろいろなデザイン画を描いて、見てくれと売り込みに毎日のように来るんだ。』

『今日特別に時間をとったのは、そこの電通のYさんと交友があるから、
今日は仕方なく彼の顔を立てて会ってやっているんだ。』

と、ずばり言われた。

しかしそうではあるが、ここまで来たのだから引き下がれない。

そして向こうの質問責めが始まった。

『君はどういう学校を出てるんだ?職業の経歴はどうなんだ?』

と面接のように聞かれ、聞かれるままに説明はしたのだが、

『当社は昔から、美大など学校を卒業した人は採用しないのだよ。
変な理屈や理論武装をしていたり、妙なデザインの癖がついた人はいらない。
もっと才能のある、まったく手垢のついていない人をこちらで一から育てていくのが、当社の伝統なのだ。』

そういわれていみれば、ジウジアーロやガンディーニもそうだった。

才能を見出されて、天才型として育てられた人達だ。

もちろんそれはいいことだとは思うのだが、まずは自分の作品を見てもらうことにした。

『こちらも時間がないので早く見せてみろ。』

レンダリングのスケッチなどを、順番に見せていった。

私もいくら自信があったとはいえ、

デザインの本場、しかもあのベルトーネのマネージャーとチーフデザイナーを前にして、

何を言われるのだろうと内心気が気ではなかった。

いくら自信のある人でも不安になるシチュエーションだ。

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1 comment

    • Gerry on 2016年05月14日 at 18:38

    Reply

    Good to find an expert who knows what he’s takling about!

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